「どうしよーう……」 ヘタリとその場に座りこむと、少年は今にも泣きそうな声をあげた。 何も知らないばあちゃんは、少年の背中をオロオロとなでるしかなく。そんな調子でしゃくりあげながらも、少年は今までのいきさつをばあちゃんに話すと、「ごめんなさい」とうつむいた。 その間、ばあちゃんは黙って聞いていたが、おもむろに水の中へ手を入れると、ペロリとなめた。 いきなりのその行動に目を丸くした少年に、ばあちゃんは笑って言った。 「これは、ただの海水だよ」 「え?」 少年は口をポカンと開けてばあちゃんを見上げた。少年は、水がめの中身はお酒か薬のようなものだとばかり思っていた。父親からも「大切なもの」だと念を押されていたし、だからここまで必死に運んできた。 「父ちゃんの嘘つきぃ」 今までの疲れがどっと出てきて、ポツリとつぶやいた。 「でも結局、水はこぼしちゃったし……父ちゃん、帰っても家に入れてくれないよ、きっと」 ばあちゃんは、水がめを見て何かを考えているようだった。そして、穏やかな顔で少年のほうに向きなおった。 「大丈夫、そんなことないよ。今晩は家の中でゆっくり寝られるから」 「なんで?」 少年の顔はまだ曇ったままだ。ばあちゃんはそんな少年の頭を、元気づけに二、三度叩いた。 「お前は一生懸命ここまで持ってきてくれた。ばあちゃんが水がめの中身をちゃーんと受け取ったんだから、ションボリすることはないんだよ」 「だって、ばあちゃん……」 「中身があるわけないのにって、思ってるだろ?」 よっこらしょ、とばあちゃんは立ち上がった。 「このなかには、おまえの一生懸命な気持ちがじゅうぶんにつまってるんだよ。お前の父ちゃんも、きっと許してくれる」 「そうかなあ!?」 少年の瞳が輝いた。そして、ひんまがったつりざおを持って肩を落とした父親のことも、一緒に思い出した。 「帰ったら、父ちゃんにもう一度謝るよ。つりざおのことも、水がめのことも」 「そうだね。ほら、お腹すいてるだろう?おにぎり握ったげるからあがっていきな」 ご飯という言葉を聞くなり少年は元気づいて、 「うん!服乾かしてくる」 と、外へ駆け出していった。 この童話(小説?)は高校生の夏休みの課題でして、「読書感想文か童話を書く」ということだったと思います。感想文が苦手な私は、童話の方がおもしろいだろう!と安易に決めてしまいましたが、それからが大変でした(^_^;;) 結局、こんな…童話なのか何なのか分からないものになってしまいました。 でも、こういう昔話的な(平成の時代じゃないことは確かです)話は、小学生の頃の田舎を思いおこさせるんです(*^^*)昔話ってホッとしたりしません? |