「あ…」 彼女は、ほんの少し昔の面影を残していた。 私のことを覚えているだろうか…? 私は…今でもはっきりと思い出す。 忘れたいのに忘れられない、8年前の出来事。 彼女との最初の出会いは、小学5年の頃だった。 その頃の私は、…自分で言うのもなんだけれど、 かなり「真面目」な性格の「優等生」だったと思う。 その年、私は学級委員を任されていた。 学級会では司会をして、クラスの意見をまとめる。 運動会や旅行では率先して指揮をとる。 …これが、学級委員の主な仕事。 いわばクラスの代表だった。 「学級委員としての責任感」と「他人を助けてあげる喜び」で、これらの仕事を面倒だとは思わなかった。 むしろ、“仕事”に一生懸命な自分が好きだった。 そんな中、私はクラスで一人浮いている女の子のことが気になって仕方なかった。 誰もが、彼女と一緒に居る事を避けていた。 「なんか、ねぇ」…と女子はささやきあい、 「こっちくんなよ、デブ!」…と男子はからかった。 彼女は、いつも一人だった。 理科の実験の時も、校庭での写生の時も。 先生は困り果て、そういう事がある度に、 「どこか、入れてやってくれないか?」 と言ってまわり、彼女を適当な班に入れていた。 私は、この言葉を聞くのが辛かった。 私は勇気を奮って彼女に声を掛けたのだ。 「こっちに来て、私達と一緒に絵を描かない?」 それが…彼女との出会いだった。 それ以来、休み時間ごとに彼女のところへ行って、声を掛けた。 班決めの時に1人でいたら、班の仲間を説得して、 彼女を自分の班に入れてあげたりもした。 成績が良くない彼女の為に、よく勉強も教えてあげた。 校庭で一緒にドッジボールもした。サッカーも、当時流行ってた“ゴム段”もした。 クラスのみんなには、「面倒見いいよねぇ」なんて、皮肉を込めて言われた。 でも先生は、私と彼女が一緒にいるのを見て、 「先生は安心したよ。彼女がクラスになじんでくれて良かった」 …と、ほっとした表情で言った。 そして、1年が過ぎて… クラスは持ちあがりで、私達は6年生になった。 6年になったあたりから、休み時間に彼女の席に集まる女の子が多くなった。 でも逆に、私は彼女と疎遠になっていった。 |